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ショパンコンクール2025を10倍楽しむ!バラード・幻想曲・舟歌から始める推しピアニストの見つけ方

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副交感神経が劣位
副交感神経が劣位
ショパンコンクール2025を10倍楽しむ!バラード・幻想曲・舟歌から始める推しピアニストの見つけ方

いま、ワルシャワで歴史が動いています。

2025年10月、5年に一度(今回は4年ぶり)のショパン国際ピアノ・コンクールが開催中。この記事を書いている今、まさに3次予選の真っ只中です。世界中から集まった若きピアニストたちが、ショパンの音楽に命を吹き込んでいます。

International Fryderyk Chopin Piano Competition

私は社内Slackの雑談チャンネルでショパンコンクールを推しているのですが、どうやら誰も見てくれている気配がありません。それもそのはず、

「でも、クラシック音楽って難しそう…」
「ピアノのことよくわからないし…」

そう思っている方がほとんど。ピアノが近い存在ではない方にとって、ショパンコンクールをどう楽しんでもらえるかを考えた末、たった6曲の中から「好きだな」と思える曲を1つ見つけることから始めるのがいいのではないかという結論に至りました。そして、その曲を弾いたピアニストを追いかける。それだけで、ショパンコンクールは驚くほど楽しくなります。

200年前にショパンが紡いだ物語の世界へ、一緒に飛び込んでみましょう。

5年に一度の「ピアノの祭典」

ショパン国際ピアノコンクールは、1927年に始まった世界最古の国際ピアノコンクールです。チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際コンクールと並ぶ「世界三大コンクール」の一つとして、多くの偉大なピアニストを輩出してきました。

前回2021年の優勝者ブルース・リウ、第2位の反田恭平。彼らの名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。本来は5年に一度の開催ですが、コロナの影響で前回が2021年に延期されたため、今回は4年ぶりの開催となりました。

今大会、ここが変わった!

第19回となる今回のコンクールでは、いくつかの興味深い変更がありました。特に注目すべき3つのポイント

1.1次予選から「スケルツォ」が消えた

これまで1次予選の目玉だったスケルツォ(ショパンの4曲ある劇的な作品)が、予備予選に移動しました。その代わり、1次予選ではバラード、幻想曲、舟歌という「物語性の強い大曲」に焦点が当たることになりました。

これは何を意味するのでしょうか?スケルツォは技巧と迫力を見せる曲。たいして、バラードや幻想曲や舟歌は長大な物語を語る曲です。

2.ワルツが1次予選に新登場

これまで2次予選で課されていたワルツが、1次予選に登場しました。同時に、エチュード(練習曲)は2曲から1曲に削減されています。

ショパンのワルツをどう弾くかはショピニスト(ショパンを弾くピアニスト)にとって凄く重要で、それぞれのコンテスタントがワルツにどう向き合うか早い段階で聴きたいと思ったそうです。

3.本選に初めてピアノソロ曲が登場

最も大きな変更がこれです。本選(ファイナル)では、これまでピアノ協奏曲(オーケストラとの共演)のみが課されていました。しかし今回、協奏曲の前に「幻想ポロネーズ」を全員が演奏することになったのです。

幻想ポロネーズは、ショパンが祖国ポーランドへの想いを最も高らかに歌い上げた傑作です。

意図は2つあるそうで、オーケストラとの共演が初めてで緊張し、音楽に入り込めなかったコンテスタントがこれまでに何人もいて、独奏曲を弾くことで音楽に集中するための時間を与えたいというのが一つ。もう一つは、ピアノ協奏曲はショパンの若い時の作品ですが、晩年の成熟した作品である幻想ポロネーズを弾いていただくことで、ピアニストの持つ資質の幅広さを聴きたいと考えているそうです。

第2章:物語を奏でる6つの名曲──あなたの「推し曲」を見つけよう

1次予選の課題曲、4つ目のグループ。そこに並ぶのが、バラード4曲、幻想曲、舟歌の計6曲です。

これらに共通するのは、全て10分前後の大曲であり、物語性が強いということ。ショパンは、歌曲の形式だった「バラード」を初めてピアノ独奏曲として確立した作曲家です。詩人アダム・ミツキェヴィチの詩に触発されたとも言われ、各曲には物語が息づいています。

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私の愛読書

バラード第1番 ト短調 Op.23「衝撃の一音から始まる壮大な物語」

作曲:1831〜1835年(ショパン26歳)

もしあなたがフィギュアスケートを見ていたなら、羽生結弦選手のプログラムで聴いたことがあるかもしれません。映画『戦場のピアニスト』で使われたのも、この曲です。

そして、一度聴いたら忘れられない──冒頭の重々しい「ド」の音。

たった一音。けれどその音には、これから始まる物語の壮大さと悲劇性が凝縮されています。オクターブで奏でられる7小節の序奏は、極めてシンプル。技術的には初心者でも弾けるほどです。しかし、その一音を鳴らすために、どれほどの集中力が必要か。熟練したピアニストでさえ、この冒頭で緊張すると言います。

この曲は、ポーランドの詩人ミツキェヴィチの「コンラード・ヴァレンロッド」という詩に基づいているとされます。リトアニアの英雄が、祖国のために敵に潜入し、最後は自ら命を絶つという悲劇の物語。

1831年、ショパンは21歳でポーランドを離れます。その後、祖国は列強に分割され、ショパンは二度と故郷の地を踏むことはありませんでした。バラード第1番は、そんな「失われた祖国への想い」が込められているのです。

作曲家ロベルト・シューマンは、この曲について「ショパンの作品の中で最も好きだ」と語っています。

バラード第2番 ヘ長調 Op.38「優しさと激情の二面性」

作曲:1839年

曲はヘ長調、明るく穏やかな調で始まります。ハ音のユニゾンの序奏の後、4声部で書かれた落ち着いた牧歌的な第1主題が歌われます。まるで、春の草原を散歩しているような平和な情景。

ところが、曲が進むにつれ、雲行きが怪しくなります。中間部では激しさを増し、最後はイ短調──暗く悲劇的な調──で終わるのです。この「明から暗へ」の転換が、バラード第2番最大の特徴。

シューマンが語った逸話
献呈を受けたシューマンは、「音楽新報」でこんなことを書いています。
「以前ショパン自身がこの曲を試演した段階では、曲はヘ長調で終わっていた。決定稿ではイ短調に変わっている」
そして、ショパンはこの時、ミツキェヴィチのある詩に霊感を得て作曲したと語ったそうです。どの詩かは明らかにされていませんが、その物語が悲劇で終わることだけは確かです。
シューマンは第1番ほどこの曲を高く評価しなかったと言われていますが

バラード第3番 変イ長調 Op.47「水の精の誘惑」

作曲:1840〜1841年

私がバラードの中で最も好きな曲。そして今大会、最も選ばれた曲でもありました。

この曲も、ミツキェヴィチの詩「水の精(Świtezianka)」に基づいていると言われます。

物語はこうです
──ある男と娘が永遠の愛を誓います。けれど娘は、男の心に疑いを持ち始めます。本当に自分を愛しているのか?娘は男の誠意を試すため、美しい湖の精に姿を変えて男を誘惑します。
男は誘惑に負けます。娘への想いとともに、魂を奪われてしまうのです──

一見優雅で演奏しやすそうに聞こえますが、実は繊細なダイナミクスのコントロールが非常に難しい曲です。

技術ではなく、センスと表現力が問われる。だからこそ、ピアニストの個性が最も出る曲とも言えるでしょう。

バラード第4番 ヘ短調 Op.52「ショパン最高の技巧と表現」

作曲:1842年(ショパン32歳)

ショパンのピアノ作品の中でも、特に演奏困難とされる作品の一つ。それがバラード第4番です。技術と表現の両方が最高レベルで要求される曲です。

静謐な主題と、炎が燃え盛るような激情的なコーダ。この対比を表現するには、指の技術だけでなく、音色のコントロール、ペダリング、そして何より深い音楽的理解が必要です。

ロンド風でソナタ形式と変奏曲形式の両面の特色を持つという、複雑な構造。ショパンの円熟期の作曲技法が尽くされています。

この曲も、ミツキェヴィチの詩「ブードリスの三人の兄弟」から着想を得たと言われます。三人の兄弟が祖国のために戦い、最後は湖に身を投げるという悲劇の物語。そこには、ポーランドへの深い想いと、抵抗の精神が込められています。

幻想曲 ヘ短調 Op.49「祖国への想いと情熱の物語」

作曲:1841年(ショパン31歳)

幻想曲の「幻想」とは、形式にとらわれない自由さを意味します。ショパン唯一の幻想曲であるこの作品は、ソナタ形式的な構造を持ちながらも、極めて自由に展開していきます。

リストが語った「喧嘩と仲直り」
ショパンと親交のあったフランツ・リストは、この曲について興味深い逸話を残しています。「これは、ショパンとジョルジュ・サンドの喧嘩と仲直りを表現した作品だ」
当時ショパンは、女性作家ジョルジュ・サンドと恋愛関係にあり、彼女の実家があるノアンで夏を過ごしていました。1841年は、健康的にもサンドとの関係においても非常に充実した時期。この幻想曲は、そんな溌剌とした気分の中で生まれたのです。

暗い序奏は「喧嘩」、華やかな終結は「仲直り」。そう聴くと、また違った物語が見えてきませんか?

舟歌 嬰ヘ長調 Op.60「たゆたう水面に映る晩年の美」

作曲:1845〜1846年(ショパン36歳)

「舟歌(barcarolle)」とは、ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの歌に由来します。水面を進む小舟のゆらぎ。寄せては返す波のリズム。

ジョルジュ・サンドとの関係は冷え込み、別れが近づいていました。持病の結核も悪化の一途。経済的には小康状態を保っていたものの、心身ともに疲弊していたのです。そんな中で生まれたのが、この舟歌。

全体は自然に流れ、あたかも抒情的に聞こえる。物語性と抒情性を見事に融合させた、晩年期の最高傑作の一つです。

ショパンは「二人以上の前で演奏してはならない」と語ったとも伝えられています。それほどまでに、この曲は私的で、繊細で、美しい。

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まとめるとこんな感じ

ショパンコンクールの素晴らしいところは、すべての演奏がYouTubeでアーカイブされていることです。

まずは6曲それぞれを、有名ピアニストの演奏で聴いてみてください。そして「これいいな」と思う曲が見つかったら、1次予選のアーカイブで、その曲を選んだピアニストたちの演奏を聴き比べてみてください。

同じ曲なのに、演奏者によって全く違う物語が見えてくる。それが同曲異演の醍醐味です。

第3章:3次予選進出者から注目のピアニストをピックアップ

1次予選を勝ち抜いた40名、そして2次予選を突破した20名。彼らは今、3次予選という最後の関門に挑んでいます。

ここでは、その20名の中から私が個人的に注目しているピアニストを紹介します。

牛田智大(日本、25歳)【舟歌を選択】

7歳でデビューリサイタル、「天才少年」として注目を浴びてきた牛田さん。TVなどのメディアで目にされた方も多いかと思います。

じつは今回、牛田さんにとってショパンコンクールは2回目の挑戦です。

前回2021年の第18回大会、牛田さんは1次予選を通過したものの、2次予選で惜しくも敗退(2次予選40名中30位)。当時21歳、素晴らしい演奏でしたが、世界最高峰の舞台の厳しさを味わう結果に。

すでにリサイタルで席が埋まるほどの知名度を持っている牛田さんですが、ショパンコンクールという大舞台に再度挑戦する姿

3次予選では、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズという、約14分の大作を自由曲に選択しています。この曲は、静謐なピアノソロと華麗なポロネーズが組み合わさった作品で、表現力と技巧の両方が問われます。

私が学生時代、勉強しながらよく聴いていた曲です。

Hyuk Lee(韓国、25歳)【幻想曲を選択】──兄弟で挑戦

Hyuk Leeさんもショパンコンクール三度目の出場です。第17回,第18回ともにファイナリストに選ばれています。

第19回である今回は弟のHyo Lee(18歳)とともに3次予選進出。兄弟揃っての快挙です。兄弟で曲目が全く重ならないように工夫されていそうです。ソナタも、マズルカも、全て違う選択。

3回連続ファイナリストに選ばれる実力者であり、三度も出場するということは入賞という実績自体にも心残りがあったのかもしれませんが、本人の中で消化しきれない何かがあったのかなと注目しています。

3次予選ではバラード3番を弾きこなしていました…!

桑原志織(日本、29歳)【バラード第3番を選択】

20名の中で最年長の一人。1次予選では最も今大会で人気のあったバラード第3番で勝負していました。2025年にはエリザベート王妃国際音楽コンクールでファイナリスト入賞という実績も。

Eric Lu(アメリカ、27歳)【舟歌を選択】

前回2021年のショパンコンクールで第5位入賞という実績を持つピアニスト。つまり、このコンクールの舞台を知り尽くしています。

注目すべきは、牛田さんと同じく舟歌を1次予選で選び、さらに3次予選でも再演奏すること。この曲への深いこだわりと自信が見えます。

Kevin Chen(カナダ、20歳)【バラード第4番を選択】

どこかで『ピアノ界の藤井聡太』と呼ばれているのを見かけました。
Kevin Chenは、ジュネーブ国際コンクールとルービンシュタイン国際コンクールの優勝者。若くして既に国際舞台で証明された実力の持ち主です。

1次予選ではバラード第4番に挑戦。さらに3次予選でも再び演奏するという選択。

何よりも注目すべきは2次予選でエチュードOp.10全曲(12曲)を演奏したこと。体力的にも技術的にも精神的にも極めて困難。

私はアーカイブを見て「あらら、1.25倍速にしてしまっているな」とYouTubeの設定を確認したほど、恐ろしい速さで弾きこなされていました(実際には等倍でした)。

Eric Guo(カナダ、23歳)【バラード第3番選択】

バラード第3番を1次予選で選び、3次予選でも再び演奏。

エリックさんにとっての音楽は数多くある趣味の一つに過ぎず、あらゆるスポーツが好きで、登山や長い散歩も好まれたり、いかにもピアニストという嗜好ではないんですよね。

これらが楽器を演奏するのにとても役立っていることに最近気づいたとインタビューで仰っていて、私の好きなバラード3番を二度も弾くことを選択していることから注目しています。

第4章:これからの楽しみ方──3次予選からファイナルへ

3次予選の見どころ

今まさに進行中の3次予選。ここでの課題は、45〜55分のリサイタル形式です。

必須課題曲

  • ピアノソナタ(第2番「葬送」または第3番から選択)

  • マズルカ集から1組(Op.17、Op.24、Op.30、Op.33、Op.41、Op.50、Op.56、Op.59)

  • 上記に加えて、任意のショパン作品を組み合わせて、45〜55分のプログラムを構成

ここが面白いところで、自由曲で全く違うプログラムになります。

例えば、

  • スケルツォを入れて劇的に攻めるか

  • 即興曲や子守唄で抒情的にまとめるか

  • バラードを再演奏して物語性を深めるか

プログラムの構成そのものが、ピアニストの個性なんです。
まるで料理人が、与えられた同じ食材から全く違う料理を生み出すように。同じショパンの楽曲から、それぞれが自分だけの音楽の世界を創り出します。

マズルカは、ポーランドの民族舞曲。ショパンは生涯で50曲以上のマズルカを書きました。3拍子の独特なリズム。素朴でありながら、洗練された和声。祖国への想いが、最も直接的に表れるジャンルです。

ファイナルへ──幻想ポロネーズという新たな挑戦

3次予選を突破した10名が、本選(ファイナル)に進みます。

本選に初めて「幻想ポロネーズ」というピアノソロ曲が導入されました。歴史的な変更です。

ポロネーズは、ポーランドの荘厳な舞曲。祖国への誇りと愛が込められたジャンル。そこに「幻想」という自由な精神が加わる。つまり、ショパンの祖国への想いを、最も自由に、最も雄弁に語る作品なのです。

演奏時間は約12〜13分。技巧的にも表現的にも、最高峰の作品の一つ。

協奏曲の前にこれを演奏する。つまり、オーケストラと共演する前に、まず「あなたのショパン」を聴かせてください、ということ。

さいごに

どうやって見る?配信情報

私は『Chopin Institute』というYouTubeチャンネルで観ています。毎日目が離せません。

ワルシャワと日本の時差は7時間(日本が進んでいます)。例えばワルシャワ時間の17:00は、日本時間の翌日0:00。夜中や早朝の配信になることが多いので、アーカイブで見る形になることが多いでしょう。

推しを見つけた後の楽しみ方

多くのピアニストはSNSをやっているのでSNSでフォローしたり、そのピアニストの過去の演奏を掘り下げてみたり、もし入賞者が日本でコンサートを開くなら、ぜひ生で聴いてみてください。

私は1965年の第7回ショパン国際ピアノコンクールで優勝した『マルタ・アルゲリッチ』と1975年の第9回ショパン国際ピアノコンクールに史上最年少(18歳)で優勝した『クリスチャン・ツィメルマン』の二人が推しです。

※以前書かれた以下の記事でも触れています。

わたしたちの勝負曲

前回優勝したブルース・リウもとても気になっていて、リサイタルが日本で行われるならぜひ足を運びたいと思っています。

今、ワルシャワのフィルハーモニーホールで、若きピアニストたちがショパンを奏でています。歴史的な瞬間を、一緒に楽しみましょう!

…みたいな気概は正直なくて、ショパンコンクールやピアノに触れたことで人生がちょっと楽しくなる、そんなきっかけになるといいなと思って書きました。が、意図せず長くなりすぎました。600〜800字くらいでサクッと書くつもりが7,000字強の長編に。

私はピアノをきっかけに人生が楽しくなったような気がします。リサイタルに足を運んだり、家でクラシックピアノを聴いたり、ピアノ描写が出てくる本(蜜蜂と遠雷など)や漫画(のだめやピアノの森など)がさらに楽しくなったり、とっつきづらいかもしれませんが、良いものですよ。

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