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ロジ書評番外編:予算ひとり1万円の選書会を丸善・丸の内本店で行いました

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ROZILICA編集部
ROZILICA編集部
ロジ書評番外編:予算ひとり1万円の選書会を丸善・丸の内本店で行いました

ROZILICAではファッションジュエリーを展開していますが、私たちのカルチャー発信の場を設けるべく、今年に入ってからnoteを始めました。その筆頭として、noteマガジンにて「書評」を月に2回ほどの頻度で投稿しています。
普段は各人がジャンルフリーで本を選び、掘り下げていくスタイルですが、今回は少し変わった試みをしてみました。

同じ書店で、同じ予算と時間で、それぞれ本を選ぶ。

これは、その時の様子を振り返った選書の記録です。

ルール:
予算1万円以内(税抜)で本を選ぶ。
ジャンルは、漫画や雑誌以外であれば何でもOK。

(予算を決める際、税込か税抜かで揉めつつスタートしました)

はじめての丸善・丸の内本店……のはずが

振り返って選書していた当時のことを話すと、やけに先輩が「ああ、あのコーナーは、俺が最初に向かったコーナーと同じ並びの奥の方だよね?」と正確に場所を言い当ててきます。

聞くと「本屋の構造まで完全に記憶するぐらい練り歩いてしまったからな」だそうです。

そのときは14時から選書スタートで、別行動。集合時間は14時半ということで一旦解散しました。
どんな動きでコーナーを見ていたかを質問されたので、「最初は宗教とか哲学のコーナーの……」と詳しく説明しようとしたら、「ゲーマーがマップを頭に完全に入れてる」みたいな感じで答えられます。本当に初見?

丸善・丸の内本店は1階がビジネス書、2階が漫画・雑誌、3階がメインの売り場という構造です。
一般的な書店のイメージでは、雑誌や文芸書が目立つところに置かれているイメージですが、1階がビジネス書メインのフロアなのは「さすが丸の内!」と言わざるを得ません
やはりビジネスマンがスッと立ち寄れるようにしているのかな。

東大の赤本に夢中で遅刻する先輩

14時40分の約束時間になっても先輩は現れず。すでに5冊ほど選び終えていた私は、集合場所から近くの、戦争特集のコーナーで立ち読みし待っていました(興味深すぎて、ガザ問題の本を個人的に買いました)。

先輩から一報があり「とりあえず15時まで延長したい」とのこと。ですが結局、先輩が現れたのは15時20分過ぎ。

げっそりとした顔をして現れたので「悩んでたんですか?」と聞くと、

「ごめん。14時57分まで東大の赤本読んでた。そしたらあと3分しかない、やべえってなって、そっから本をちゃんと決めようってなって。気づいたら15時20分ぐらいになってて……」

15時20分の時点でも、おそらくフロア全体を巡回できていない様子でしたが、フルマラソンを終えたみたいに疲れた顔をしていたので、他のフロアは強く勧めませんでした。(ということで今回は、3階メインでの選書です)

田舎と東京、本屋のちがい

地方出身者の方にお尋ねしますが、地元の本屋って大きいですか?

先輩「本屋ってやっぱ東京じゃない? 田舎でデカい本屋ってないじゃん」
私「え、それでいうと地元の本屋はデカいです」
先輩「マジで?」

もちろん場所によると思うんですけど、私の地元はショッピングモールに入っているような本屋ですら体育館くらい広くて、おまけにスタバとかタリーズなどのチェーンカフェが併設されているイメージがあるのですが……。

先輩「東京の本屋って、仕方ないとは思うんだけど縦に大きいからさ。中央にエスカレーターがあって、それを囲むように本棚がある造りがちょい苦手」

私「東京の本屋ってエリア移動が大変ですよね。でも、都内の本屋って「こんな本があるの⁉︎」って驚かされるんですよね」

先輩「でも俺、大人になるまで本屋に特徴あるのあんまり知らなかったんだよね。今日行った丸善だってさ……」

私「ああっ」

私と先輩「利他のコーナー……!」(口を揃えて言う)

「利他」のコーナー

今回の選書で最も印象的だったのは、やはり3階にあった「利他」コーナーです。

例えば私が書店員だとして。本を売るために「コーナー作って」と上司に言われた時に「よし、今回は利他でいこう」となる……か?

先輩も利他のコーナーは衝撃だったようです。「もう丸善・丸の内って、利他なんだ……」としみじみ。

別行動でしたが二人とも「利他」にかなり惹かれ、お互いそれぞれ利他コーナーから一冊ずつ選書しました。

私:『贈与論-資本主義を突き抜けるための哲学』(岩野卓司)
先輩:『「利他」の生物学』(鈴木 正彦、末光 隆志)

丸善・丸の内本店「利他」コーナーより

「贈与論」を私たちはどう落とし込むか

利他コーナーには、項目がさらに細分化されており、私は特に「贈与論」という項目に興味津々でした。

贈与論のいくつかの書籍を確認しましたが、最も読みやすそう、かつ一方的に与えることについて書かれたものを選書しました。
「与える」というより「等価交換」について書かれた本も一部あったのですが、それって「利他」ではないなあと思いまして。

先輩は「『贈与論』として哲学分野や学問が存在するの!?」と驚きながら、ジュエリーにまつわるこんな話をしてくれました。

「ジュエリーってまったく以て必要不可欠なものではないのに、人類は古来からジュエリーを身につけていて未だに存続しているのが面白くて。それでジュエリーの起源を勉強したことがあるんだけど、その起源のひとつが贈与だったんだよね」

図らずもジュエリーの本質への理解を深めようとしていたみたいです。
読みやすそうとはいえ、多分難しい本だと思いますが、頑張って書評にして皆さんにお届けします。

贈与論から派生して、先輩は『イヌはなぜ愛してくれるのか 「最良の友」の科学』(クライブ・ウィン)という本を選書したそうです。

表紙買いしたものだと勝手に思っていたのですが、「犬の無償の愛を科学的に解明する」という内容に惹かれたとのこと。

私たちは無意識的に「ただ与える」という行為を深掘りしたいと思っているんですかね。私の『贈与論』の書評と比べるのも楽しめそうです。

「内容」で選書する人、「運命」で選書する人

私が最初に選んだのは『知性について』(内田樹)でした。本の表紙、装丁、コピーに惹かれて購入。
最初に見かけたときから結構惹かれてたんですが、ちょっとペースが早すぎるかなと思い保留。しかし、別のコーナーで同じ本を見かけたので「あ、この本屋が推したい本はこれなのかな?」と購入を決意。

それを先輩に話すと、驚いた顔で「内容は、ある程度把握してから買うの?」と尋ねてきました。

「内容は基本パラ見するくらいでしょうか? 少しでも刺さるようなことが書いてあれば、今の自分に必要な本と判断して買っちゃいますね。選書以外でもそうですけど、運命性みたいなものをすごく重視するんですよ」

「へえ。俺はね、全くないね。ゼロ。中身分からず買うことはない。パケ買いするのも、中身知った上でのパケ買いになるね」

合流した後、先輩は原田マハの本を無意識に3冊も手に取っていたので、少なくとも私の選書に共感するのかな? と思っていたのですが、そんなことはなく。
先輩はただ「また原田マハじゃん」と思うだけで、そこから内容を吟味して決めるそうです。

たしかに、結局先輩は原田マハの本で購入したのは『さいはての彼女』(原田マハ)のみでした。
裏表紙に書かれたあらすじの「沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別⁉︎」の「女満別」がどういう意味なのか、私も先輩もわからず。
調べると、北海道の女満別(めまんべつ)という地名だそうです。知らない熟語かと思っていた……。

必ず中身を確認するという先輩ですが、1冊のみ例外がありました。
『ボクは日本一かっこいいトイレ清掃員』(大井朋幸)です。

役所広司主演の映画『PERFECT DAYS』がとにかく好きだそうで、トイレ清掃員が主人公と見て即決したそうです。

私が「さっき先輩が中身を重視するって言ってたから、これもそうだと思ってました」と指摘すると、「これは例外」とのこと。

それで言うと、私は直感で本を選ぶタイプですが『君のクイズ』(小川哲)は「例外」でした。
日本推理作家協会賞を受賞していたり、すでにかなり話題になっていたミステリー小説で、ずっと読みたいと思っていたものです。

最近になってようやく文庫化されたと聞いていて、今回店頭でたまたま見つけたので購入。(私も先輩もハードカバーが苦手なので、選書する際は文庫や新書、ソフトカバーを選ぶ傾向がある、とふと気づく)


先輩が最初に選んだのは『いい音がする文章』(高橋久美子)だったそうです。先輩がずっと留まっていた音楽・演劇のコーナーにて発見したそう。

「まず、もう草野マサムネで見るじゃん、手に取るじゃん。これは」

草野マサムネさんは、バンド・スピッツのギターボーカルです。私も先輩もスピッツが好きなので「わかります」と大共感でした。
装丁もカラフルで素敵で、すごく力を入れて出版されている本なのかなと思いながら帰社すると、本を見た同僚に「(著者の)高橋久美子って、チャットモンチーってバンドの元メンバーじゃない?」と声をかけられ、さらに驚きました。

私が選んだ『「好き」を言語化する技術』(三宅香帆)も、SNSでかなりバズっていた本なのでずっと気になっていたので、書評として書くのが楽しみな本です。
ディスカヴァー携書から発行されているので、元々の表紙はシンプルにタイトルと著者名だけのはずでしたが、「推し活」をする女の子のイラストが描かれた表紙になっていたので「せっかくならこっちのバージョンを買おう」と即購入。

ロジリカの書評マガジンは、「LLMなどの生成AIによる技術時代における、人間らしさとは? を追求する」というテーマを掲げて始まりました。

noteという媒体も、AIの力を借りた文章やヘッダーイラストなども増える一方ですが、「大AI時代だからこそ、人間として思考を発信したい」という気持ちがあります。

そんな反骨精神をスパイスとして入れた『ロジ書評』を、今後ともよろしくお願いいたします!

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1.『いい音がする文章』(高橋久美子)税抜1,700円
2.『さいはての彼女』(原田マハ)税抜520円
3.『「利他」の生物学』(鈴木 正彦、末光 隆志)税抜880円
4.『ボクは日本一かっこいいトイレ清掃員』(大井朋幸)税抜940円
5.『夢見る帝国図書館』(中島京子)税抜810円
6.『ショパン その足跡をたどる第一歩』(ヤクプ・プハルスキ)税抜1,600円
7.『イヌはなぜ愛してくれるのか 「最良の友」の科学』(クライブ・ウィン)税抜1,080円

合計7,530円(税抜)
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1.『知性について』(内田樹)税抜1,700円
2.『量子テレポーテーションで人間は転送できるか?』(二間瀬 敏史)税抜1,800円
3.『贈与論 資本主義を突き抜けるための哲学』(岩野卓司)税抜2,800円
4.『君のクイズ』(小川哲)税抜720円
5.『好きを言語化する技術』(三宅香帆)税抜1,200円

合計7,220円(税抜)

今回紹介しきれなかった本は、書評で詳しく触れていきます。

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